ちゃんと世話をしているのに野菜に元気が無いと悩んでいませんか?
その原因は肥料のやりすぎにあるのかもしれません。
肥料を上げすぎると野菜もメタボになり、病気になりやすくなってしますのです。
そうならないためには適切な量の施肥が欠かせません。
そこで今回は、野菜がメタボにならないための施肥方法について詳しく解説します。
窒素過剰と微生物の偏りは連作障害を起こしやすい
家庭菜園では連作障害に悩んでいる人が多いのではないでしょうか。
そこで、連作障害に重要なポイントを以下の2点に絞って解説します。
- 肥料のやり過ぎ
- 堆肥のやり過ぎ
連作障害と肥料のやり過ぎ
連作障害の原因の一つに肥料のやり過ぎがあります。
肥料はたくさんやればいいというものではありません。 また、万能薬でもありません。
上手に活用するためには、適正な量を施肥することがとても重要です。
肥料に含まれている「窒素」もしくは「窒素肥料」を過剰に施肥すると、返って野菜にダメージや害を及ぼします。
たとえば、以下のような害がでます。
種類 | 症状 |
---|---|
トマト | 茎葉ばかりが大きくなる 花が落ちる「樹ボケ」になる |
スイカ・メロン | ツルばかりが伸びる「ツルボケ」になる |
ハクサイ | 葉に黒い斑点ができる「ゴマ症」になりやすい |
ダイコン | 軟腐病が出やすくなる |
この他の野菜でも葉が軟弱になったり、病害虫の耐性能力も下がります。 また、茎葉が必要以上に大きくなれば、害虫も寄ってきやすくなるので施肥量には十分注意しましょう。
連作障害と堆肥のやり過ぎ
連作障害のもう一つの要因は微生物の偏りです。
同じ作物を作り続けると有益な微生物が減少し、土壌病原菌が増殖します。 その結果、連作障害を引き起こします。
堆肥の役割として、微生物の増殖と微量要素を補う働きがあります。 しかし、肥料と同様、やり過ぎると逆効果です。
動物性の堆肥には肥料成分が含まれている
みなさんは「動物性堆肥(牛・豚・鶏の糞が主体成分)」に肥料成分が含まれていることを知っていますか? 「鶏糞や牛ふんは畑に入れた方がいいよ」と聞いたから、なんとなく入れていませんか?
肥料成分の窒素が含まれているので、過剰にやると肥料と同様、野菜にダメージや害を及ぼします。
見た目や言葉で表すと、堆肥と肥料は別物ですが、成分や効果は同じ要素を持っています。
有機質の肥料や堆肥は化成肥料と比べると、緩やかに少しずつ時間をかけて効果を発揮します。 即効性がないので目に見えた効果はわかりづらいです。
堆肥を毎回、毎年使い続けると次第に肥料成分が蓄積され、施肥したときと同じ状態になります。 動物性堆肥を使う場合には、施用量を少なく調整する必要があります。
堆肥をたくさん使うなら落ち葉堆肥
肥料をあげすぎない方法としては、落ち葉堆肥を使うのも効果的です。
落ち葉堆肥は、窒素成分が1%以下で動物性堆肥よりも少なく、微量要素や微生物が増えやすい効果も持ち合わせています。
落ち葉堆肥は自分で作れますが、作れない場合は市販の「完熟した腐葉土」がおすすめです。
完熟した腐葉土は窒素成分も少なく、使用量は年1回で1㎡あたり2〜3㎏も使えば十分です。 「堆肥も肥料と同じ効果がある」ことがわかってもらえるだけでも連作障害対策に一歩近づきます。
家庭菜園におすすめの施肥方法
「肥料や堆肥のやり過ぎはダメ」なことがわかったところで、次はおすすめの施肥を紹介します。
肥料の買い過ぎに注意
肥料のやり過ぎの要因として、肥料の買い過ぎも関係しています。
肥料は内容量が多いほど、お得です。 どうしても「お得に購入しよう」という心理が働き、必要もないのに大量に買っていませんか?
そして、「買ったからには使わないといけない」と畑や野菜のことは後回しにして、過剰に肥料を使っていませんか?
これが過剰施肥の要因でもあります。
ホームセンターや園芸店に並んでいる商品のキャッチフレーズの誘惑に負けて買ってはいけません。
畑の面積、栽培する野菜の量に見合った必要量だけ購入しましょう。 これだけでも過剰施肥は回避できます。
野菜の成長を確認しながら追肥する
肥料を与えすぎないためには、野菜の成長を確認しながら追肥するとよいでしょう。 このメリットとして以下の点があげられます。
成長を確認しながら追肥するメリット
- 生育に合わせて必要な量だけ肥料を与えることができる
- 過剰に施肥しなくて済む
やり方は以下の通りです。
成長を確認しながら追肥するやり方
- 元肥は1㎡あたり、ぼかし肥400g程度を畑一面に施肥する
- 秋冬栽培では、春夏栽培の養分が残っている可能性が大きいので元肥はしない。
- 野菜の成長度合いに応じて追肥を行う
追肥は野菜ごとにする
追肥は、野菜のタイプごとに分けると管理が楽です。 以下の表はタイプ別に野菜を分類し、追肥方法を説明した例です。
追肥はゾーン分けで管理する
菜園マップを作るときには、追肥も考慮しましょう。
追肥を与えるタイミングがそろっている方が管理しやすいので、ゾーンに分けて管理します。
以下の表は、菜園マップを追肥のゾーンごとに色分けしたものです。
この表を見てもらうと、できるだけ追肥のタイミングが同じ野菜を隣か近くに植えることで、追肥の作業性が良いことがわかります。
秋冬栽培では、コンスタントタイプの後作に、先行逃げ切りタイプの野菜を植えれば無肥料で栽培できます。
落ち葉堆肥を使って肥料を補う
ここまで説明した通り肥料は少なめに施した方が連作障害や病気を防げます。 「肥料が少なすぎでは?」と疑問視されそうですが、肥料不足に陥ることはありません。
なぜなら、落ち葉堆肥を使うことで肥料不足を補っているからです。
それでは、どのように落ち葉堆肥を作ればよいのか、落ち葉堆肥の効能について説明します。
落ち葉の持っている特性
落ち葉は繊維質が豊富で、窒素やリン酸、カリウムなど多様な養分を含みます。
ミミズはこの落ち葉を食べて、体内で団粒を作り、畑にとって有益な働きをします。
水をかけると発酵し、微生物が住み着くため、落ち葉堆肥として土壌内の有用微生物を増殖させる効果があります。
その結果、畑の肥沃化に寄与します。
落ち葉堆肥の効果とは
落ち葉堆肥(腐葉土)は土壌改良効果があり、植物由来のものは食物繊維が豊富でフカフカな土壌を作る効果があります。
また落ち葉堆肥は微生物が増殖しやすく、病原性微生物の増加を抑え、野菜を守る効果があります。
さらに肥料成分の貯蔵と土壌養分の調整も行ってくれるので、野菜に合わせて調整してくれます。
落ち葉堆肥はこのような働きをしてくれるため、手間のかかる養分管理を代行してくれます。
落ち葉堆肥の作り方
落ち葉堆肥は自分で作ることができます。 落ち葉堆肥の作り方の手順は次の通りです。
落ち葉集め
山や公園から落ち葉を集める前に、立ち入り許可や地域の規則を確認しましょう。 12月から1月上旬が集めるベストタイミングです。
20リットルの土のう袋を用意し、ゴミや太い枝、イチョウや広葉樹の葉は避けて集めます。
15㎡の畑に必要な量は15袋分ほどです。 雨が降った後に集めると、落ち葉を濡らす手間が省けます。
落ち葉堆肥の仕込み方
今回は土のう袋の中で落ち葉堆肥を作る方法を紹介します。
はじめに土のう袋の底に畑の土を入れ、その上に落ち葉を4分の1入れて水をたっぷりかけます。
次に米ぬかと油かすを振りかけ、その上に土をかぶせて層を作ります。
この作業を4層になるまで繰り返し、最後に土をかぶせて蓋をして紐を締めれば完成です。
仕込みのコツは、たっぷりと水をかけることと、しっかり圧縮して空気を抜くことです。
切り返し(袋の詰め替え)作業を行う
落ち葉堆肥を仕込んだ後は、雨に当たらない場所に置きます。 発酵には熱が必要で、雨で冷やされると発酵がうまくいかないからです。
雨をしのぐためにビニールなどをかけて約3週間は熱を保ちます。 そして、1カ月後に「切り返し」を行い、袋内を入れ替えます。
水分を補充し、空気を入れ替えることで再び発酵が促進されます。 この作業を15袋分繰り返し、3週間おきに3カ月間行いましょう。
すると、落ち葉が発酵して体積が減少します。
10月ごろには米ぬかを混ぜると発酵が促進されます。
1年経つ頃には落ち葉の跡形もなくなり、落ち葉堆肥として使えるようになっています。
落ち葉堆肥(腐葉土)の詳細は以下の記事をご覧ください。
落ち葉堆肥にはぼかし肥料の併用がおすすめ
落ち葉堆肥には微生物が不可欠ですが、ぼかし肥料は微生物のエサとなるので、一緒に使うと発酵が促進されます。
ぼかし肥料は手作りすることができるのでチャレンジしてみましょう。
ぼかし肥料を利用するポイント
ぼかし肥料は素晴らしい肥料で、効き目の遅い有機質肥料をぼかし肥料にすると即効性が得られます。
窒素・リン酸・カリウムを補充し、有益な微生物を増殖させますが、地表にまくと微生物が死滅するため、溝を掘って埋めるか、施肥後に土をかぶせるとよいでしょう。
春先の全面元肥に使う場合は畑全体にまき、植え付け時にはマルチをめくってから畝にまいて土と混ぜます。
ぼかし肥料の作り方は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
今回は、野菜がメタボにならないための施肥方法について詳しく解説してきました。
肥料はほどほどにして、落ち葉堆肥を活用するのがメタボにならない近道です。 また、ぼかし肥料を使うとより効果的です。
施肥の量を意識して野菜を栽培しましょう。