化学肥料を使わずに有機質肥料を使って有機栽培をしたいという人が増えています。しかし、有機質肥料だけを使って栽培するには、土の力が相当ないと難しいのが現状です。
そのため、土づくりが不十分な畑では、化成肥料も補助的に使いながら土づくりをするのがおすすめです。
そこで今回は、有機質肥料の施し方について紹介します。数年続けることで、徐々に土づくりができ、施肥量が少なくなるので、継続して行いましょう。
化成肥料の施し方について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
有機栽培には土の力が必要な理由
有機栽培には土の力が必要です。ここでは、その理由について紹介します。
有機質肥料が分解されない
有機質肥料は、微生物によって分解され、土壌に保持・貯蔵されますが、土に力がないと保持・貯蔵がされません。そのため、土に力がないと有機質肥料を施しても、作物に栄養補給をすることができなくなります。
土に力がないと、肥料焼けや肥料切れを起こす
土に力がないと、有機質肥料を施しても、微生物が活発ではないため、分解が遅くなります。肥料を施してもすぐに効かないため、肥料切れになりやすくなります。
しかし、肥料が足りないからと、余分に肥料を施すと肥料を追加すると、肥料が効き始めたころには、肥料が多すぎて肥料焼けを起こします。
土に力があると、保肥力・調整力が上がる
肥料焼けや肥料切れを起こさないためには、土の力が必要です。土に力があると、保肥力・調整力が上がるからです。
保肥力が上がれば、肥料をこまめに施さなくても、長期間保持してくれます。調整力が上がると、肥料が多い時には保持してくれ、少ない時には放出してくれるため、肥料焼けや肥料切れが起きません。
有機質肥料はだんだん少なくする
化成肥料は毎年同じ量を施します。なぜなら、肥料分がすぐになくなってしまうからです。しかし、有機質肥料の場合は、最初は多めにし、徐々に減らしていきます。
ここでは、その理由について紹介します。
最初の2年は有機質肥料を多めに施す
有機質肥料はゆっくり分解されるため、すべてが分解されるまでには長い時間がかかります。有機質肥料の3~4割は、1年間では分解されず翌年に持ち越されるというデータもあります。
そのため、はじめは、化成肥料を施すより3~4割多くの肥料分を施す必要があります。しかし、一度に大量の有機質肥料を施さないように注意しましょう。有機質肥料であっても、大量に施すのは良くありません。
3年目以降は量を減らしていく
3年目になると、前年の肥料分が貯蔵されています。そのため、標準の施肥量でも十分になるでしょう。5年目以降は、標準施肥量より少なくても良いくらいです。
有機質肥料とともに堆肥も施す必要がある
ただし、有機質肥料とともに、堆肥を施すことが前提です。堆肥を施さないと、土の力が付かないので、保肥力と調整力が高まりません。また、微生物も活発にならないため、分解されにくくなります。
堆肥を施すことで、自然と病害虫にも強くなるので、無農薬での栽培も可能になります。
土の力が付くまでは化成肥料も使う
有機無農薬栽培を目指すなら、土に力が付くまでは、元肥を有機質肥料にして、追肥を化成肥料にするとよいでしょう。
化成肥料であれば、速効性があるため、植物の生育を見て施すことができます。土に力が付けば、土が自動でやってくれることを、人間がやるイメージです。
元肥は有機質肥料が中心
元肥では、窒素分、リン酸分、カリ分の補給が必要です。窒素分は、油かす、魚かすなどをメインにします。カリ分は、草木灰などを施します。
元肥と同時に、ふかふか堆肥を施すことも重要です。ふかふか堆肥は、毎年1平米あたり2~3kg施します。1年で分解される堆肥の量が、1平米あたり1~2kgと言われているため、土づくりをするには2~3kgほど必要です。
さらに、貝化石などの有機石灰と比較的効きやすい苦土石灰を使って、酸度調整も行います。
追肥は化成肥料で補う
追肥は植物の生育を見て行います。そのため、速効性がある化成肥料を使いましょう。
追肥を行うのは、窒素分とカリ分のみです。窒素は硫安、カリ分は硫加や塩加を使います。
土づくりができてくると、追肥の量を減らしていけます。追肥の必要がなくなれば、有機栽培が可能なほど土に力が付いた証拠です。
リン酸肥料は有機質肥料を元肥で
リン酸肥料は土の中を移動しないため、すべてを元肥で施します。リン酸肥料を施す場合は、骨粉をベースに過リン酸石灰を混ぜたものを利用します。
骨粉などの有機質のリン酸は吸収されにくいので、有機質肥料だけでは窒素やカリとのバランスが崩れてしまいます。そのため、効果が早い過リン酸石灰も一緒に施します。
バランスが崩れると、軟弱な生育になり、病害虫にも弱くなってしまうので注意しましょう。有機栽培ではリン酸肥料を上手に使うのがポイントになります。
元肥の窒素分
元肥の窒素分は、油かすや魚かすで施します。油かすのほうが安く、使いやすいので油かすをメインにすると良いでしょう。
しかし、少し高価な魚かすを加えると、初期生育が促進され、うま味もアップします。そのため、油かすと魚かすを1:1~2:1で混ぜて使うのがおすすめです。
おおよそ、元肥で生育に必要な窒素分の半分を施し、もう半分は追肥で補います。
元肥のカリ分
カリ分も同様に、元肥で必要量の半分、追肥でもう半分を施します。有機質肥料として、草木灰を使い、化成肥料は、硫加や塩加を使用します。
硫加や塩加がない場合には、普通化成肥料や、NK化成肥料でも問題ありません。
有機質肥料を施すタイミング
有機質肥料は、効き始めるまでに時間がかかるので、作付け前に準備しておく必要があります。
有機質肥料は2~3週間前に施す
有機質肥料は、効き始めるまでに時間がかかるので、少なくとも種まきや定植の2~3週間前に施しましょう。
有機質肥料を施してすぐに作付けしてしまうと、肥料焼け・ガス障害・発芽障害・害虫が発生してしまいます。 特に窒素分が多い肥料は注意が必要です。
地温が低い春先には、微生物の活動が鈍いため、1ヶ月前に施すと安心です。
有機質肥料を施したら、必ず土を耕し、よくかき混ぜます。その上に5~10cmの土を被せましょう。 そうすることで、根が肥料に触れずらくなるとともに、ガスが発生しても土が吸収してくれます。
発酵させたボカシ肥なら1週間前でもOK
有機質肥料を混ぜて作ったボカシ肥なら、害がすくないので、作付けの1週間前でもOKです。 よく分解されているので、吸収も早く、害も少ないです。
市販のボカシ肥料は、油かすと骨粉を使ったものが多いので、使いやすく便利です。
ボカシ肥料は、畝の下や肩に溝を掘って埋めると効果的に吸収されます。
ボカシ肥量は自分で作ることもできるので、チャレンジしてみて下さい。
まとめ
今回は有機質肥料の施し方について紹介しました。
有機栽培には土の力が必要なため、最初から有機質肥料のみで栽培するのは難しいのが現実です。そのため、化成肥料の力も借りながら土づくりを行いましょう。
そうして何年か土づくりをしていると、徐々に化成肥料の施肥量を少なくでき、最終的には有機栽培が可能になります。有機栽培ができるころには、有機質肥料も徐々に減らせるようになりますよ。