パンやうどんの原材料表記にある「小麦粉(国内製造)」という表記。
この表記があれば、国産の小麦を国内の工場で加工しているようにおもわれがちですが、実際は国産の小麦は一切入っておらず、外国産のものがあるということをご存知でしょうか。
国内製造は最終的に日本で小麦粉にされたもので、小麦が育った場所(産地)はどこの国でも表記ができます。
国産小麦と書かれた小麦の産地は日本国内です。
今回は、お料理にもよく使う小麦粉の安全性や、国内製造と国産の違いについてご紹介します。
小麦粉の国内製造とは?国産との違い
国内製造と国産の違いのポイントは加工品であるかどうかです。
- 国内製造=加工品
- 国産=生鮮原材料
小麦は、小麦粉として粉に加工をしてしまうと日持ちがせず、またダニなどの害虫の影響や湿気による品質の低下が起こります。
そのため、「小麦」として粒で輸入をして国内の工場で製粉(粉に加工)します。
そのため、小麦は大原則として「国内製造」です。
では、産地はどうでしょうか。
食品表示法では、重量順で最も重く使用している原材料について、生鮮原材料の場合は産地を、加工品の場合は製造国を国名で表示するルールとなっています。
小麦は加工品であるため、製造国の日本(国内製造)が表記されています。
ですから、小麦粉は国産小麦使用と謳っていない限りは、ほぼ外国産小麦が使われていると思って間違いありません。
国産と外国産の違いは農薬?ポストハーベストが危険
そもそも、国内で流通している小麦のほとんどが外国産です。
現在、小麦の自給率は12%程度まで下がっており、国内の85~90%は外国産の小麦を使っています。
主な輸入国としては下記の国があります。
- アメリカ54%
- カナダ30%
- オーストラリア16%
この3か国でほとんどの小麦をまかなっています。
海外の農作物すべてではありませんが、アメリカと日本では食品の安全性に対する価値観が異なります。
アメリカ産の日本国内向けの小麦では農薬が使われ、日本では禁止されているポストハーベストが問題になっています。
ポストハーベストとは、遠方へ輸出する際にカビや虫を防ぐという理由から、収穫(ハーベスト)後(ポスト)に農薬処理をする方法です。
当たり前ですが、収穫前であれば雨などで農薬が薄まる可能性もありますが、収穫後に農薬処理をすれば、薄まることなく食品が輸入されることになります。
また、国産では検出されない除草剤のグリホサートという成分が、輸入の小麦粉からつくられたパンや輸入小麦を原材料として作られた醤油からも検出されています。
実はこのグリホサートは、アメリカでは健康被害で訴えられ、多額の支払いが生じているアメリカでは有名な成分です。
そんな訴訟が起きている有害な成分ですが、日本向けの小麦では多くのグリホサートが使われているのです。
遺伝子組み換え小麦は流通しているのか?
遺伝子組み換えの小麦は流通しているのでしょうか?
現在は遺伝子組み換え食品に関しては、どの国も拒否反応を示しているため、生産自体されていないでしょう。
農薬に関して日本よりも寛容であるアメリカですら、遺伝子組み換え小麦は認可されていません。
遺伝子組み換え技術で最大手のモンサント社のホームページでも、小麦に関しては一切触れていません。
世界各国が拒否反応を示している中で生産しても、輸出する場所がなければ意味がないので、現段階では遺伝子組み換え小麦の心配はしなくても良いのではないでしょうか。
〇〇産小麦使用とは100%ではない?
「国産小麦100%使用」と表記のあるものは、日本国内で作られた小麦100%です。
しかし、「大括り表示」が認められており、産地国が3か国以上ある場合は「輸入」と表記を行えばよいとされています。(厚生労働省サイト参照)
また「又は表示」もあり、どちらかまたはその混合という意味です。
具体的に「国産またはアメリカ産」と表記があった場合、「国産100%」、「国産とアメリカ産の混合」、「アメリカ産100%」のいずれかであるため、国産の文字が入っていても国内産地の小麦は全く使われていない可能性があります。
「大括り+又は表示」も認められており、「国産又は輸入」という表記も認められています。
日本国内かもしれないし、海外かもしれないというもので、地球上どこで作られたものかわからなくなっています。
この表記が許されてしまっていては、どこの国で作られたものなのか、何も情報をえることができません。
安全性の高い小麦粉を選ぶポイント
食の基本となる主食で用いられることの多い小麦に対して、安心で安全なものを選ぶにはどのようにしたらよいでしょう。
一番は国産の小麦を使うことです。
しかし、日本では土地が狭い上に輸送などのコストも多くかかってしまうため、輸入小麦と比べて数倍の値段がするものもあり、日々の食卓に気軽に用いることは難しくなっています。
輸入国が限られているものを使う
対策1つ目としては、一つの国から輸入されている商品を使うことです。
特に、流通量と安全性からオーストラリア産の小麦をチェックしましょう。
輸入されている小麦の中でも、上記のグリホサートの残留農薬ではアメリカ産が95%、カナダ産が100%の検出率だった状況でオーストラリア産が12%、フランス産が6%と明らかに低くなっているため、オーストラリア産の小麦をつかった製品を使用するとよいでしょう。
全粒粉よりも精製されたものを選ぶ
全粒粉は栄養や食物繊維も豊富で、精製された小麦でつくったパンよりもヘルシーで体に良いイメージがありますが、輸入小麦ではこれは当てはまりません。
輸入された小麦は収穫後、輸送中に腐らないように農薬が散布されていますので、皮を少ししか剥かない全粒粉では収穫後農薬がそのまま口に入ってしまいます。
精製される小麦粉は、国内の工場で皮が向かれ白く精製されますので、外の殻や皮は取り除かれるため、残留農薬は少しだけ少なくなっていますが、それでも多くの農薬が検出されています。
全粒粉パンは国産小麦やフランス産など小麦産地の確認をしてから購入しましょう。
米粉を使用する
小麦粉ではないので少し趣旨は外れてしまいますが、お米を挽いた米粉の使用も農薬の観点からみたときには安心で安全です。
日本国内では多くのお米を作っています。
米に限って言えば自給率は100%で輸入に頼らなくても国内生産のため、収穫後農薬の心配もありません。ライスペーパーなどの輸入を考えれば100%となりませんが、日本国内で作られている米粉はほとんどが国産です。
古くからせんべいや和菓子などには多く使われて、限定的な使い方をされていた米粉ですが、最近では見直されています。
小麦粉では含まれるグルテンも入っていないため、小麦アレルギーがあっても食べられます。
また、最近の粉砕技術の向上に伴い細かくする製粉技術も向上し、米粉を使ったお菓子や料理の研究もおこなわれてきました。
小麦と全く同じとはなりませんが、安心・安全な食を守るために一度は検討したいですね。
小麦粉の国内製造とは?まとめ
今回、国内製造の小麦粉について紹介しました。
「国内製造」と表記があると、国内で作られた安心・安全なものを想像しがちですが、実際に小麦が育った環境や、日本に来るまでの状況は防カビ剤などの農薬にまみれています。
安心・安全な食生活を過ごすためにも、産地には気をつけ、できる限り国産を使用し、輸入小麦を使う場合でもオーストラリアやフランスの小麦を利用してみませんか。
1回1回の摂取量は少なくても、食事の中に多く取り入れられている小麦粉では知らず知らずのうちに多くの農薬を取ってしまいます。まずは自宅の小麦粉から変えてみるよう心がけてみてはいかがでしょう。