日常の中で〝卍〟という字を、見たり聞いたりすることはありますか?
地図の中には当たり前にありますし、少し前には若者の間で「マジ卍」という言葉が流行ったり、今でもインターネットのSNSなどで語尾に〝卍〟をつけている文章を見かけることがありますよね。
日本では規制の無い〝卍〟という字ですが、使ってはいけないと言われることもあります。
しかし、結論から言うと、使ってはいけないというわけではありません!
ではなぜ〝卍〟という字は、使ってはいけないと言われるのでしょうか?
今回はそんな謎多き〝卍〟について調べてみました!
卍は使ってはいけない?本当の意味とは?
日本では〝卍〟という字をインターネットや地図記号など、何気なく目にすることが多いかと思います。
実際、とくに気にすることなく使用している人もいるのではないでしょうか?
ましてや、この〝卍〟に込められた本当の意味を知っている人は意外と少数派です。
じつは〝卍〟は本来 〝おめでたいこと・幸福〟という意味があるのです。
卍の由来は、古代インド語の『サンスクリット語』だと言われています。
サンスクリット語で卍を解釈すると、上記のようになります。
そのため、仏教やヒンデゥー教でも “幸福の印” として用いられます。
ですから、使ってはいけないというのは誤った認識なのです。
事実、ヨーロッパでも19世紀から20世紀はじめにかけて、幸運のシンボルとして流行したことがあり、軍旗などにも使用された例があります。
ではどうして使ってはいけないという誤解が生まれたのでしょうか?
それには、ナチスのハーケンクロイツと間違えやすいということが関係しているのです。
卍とナチスのハーケンクロイツとの違い
幸福の印とされていた〝卍〟とは違い、よく似た〝卐〟はとある人物、思想によって忌まわしいものとされているのです。
この2つは「左向きまんじ」「右向きまんじ」と区別されることもあります。
〝卐〟は第二次世界大戦中に約600万人ものユダヤ人を大量虐殺をした、ヒトラー率いるナチス・ドイツ軍のシンボルマークであり、その別名をハーケンクロイツと言います。
この痛ましい事件を想起させることから、ナチスの象徴でもあったハーケンクロイツの使用は、自粛している国や企業が多い。
しかし「左向きまんじ」自体には悪い意味はなく、ヒンデゥー教では「右向きまんじ」同様に使用されています。
日本ではユダヤ人の迫害などナチス・ドイツの話を耳にすることはあっても、身近なものと捉えている人が少なくないのが現状です。
それ故に〝ハーケンクロイツ〟がたびたび使用され、ニュースになることもあります。
日本では厳格に規制はしていませんが、〝卐〟というマークだけでなく、ハーケンクロイツを連想させるものを全面禁止しているという国もあるほどです。
近年では、日本のアイドルグループがハロウィンに披露した衣装がナチス・ドイツを連想させるとして、日本国内だけでなく海外メディアにも取り上げられることもありました。
また、東京オリンピックに際して、お寺の地図記号〝卍〟を変更する議論が行われたりもしました。
こちらは「文化や由来を理解してもらうべき」などの意見が多く、変更しないこととなり、それぞれの文化が尊重された結果となりました。
これらの問題は、日本人だから関係ないという意識では済まさず、それほどデリケートなものだという認識が必要かもしれません。
若者間でブームになった「マジ卍」とは?
2017年頃にSNSや女子高生を中心にブームとなった「マジ卍」という言葉。覚えていますか?
わたしはテレビで藤田ニコルさんと梅沢富美男さんが使用していたのが印象的でした。
この言葉は主に、感情が昂った時に使われていたようです。「すごい!」とか「やばい!」とか、自分たちが若かった頃にとにかく言っていた言葉が「マジ卍」に置き換えられているイメージでしょうか??
「マジ卍」の〝卍〟はお寺やナチスドイツなど、上述してきた意味を含んでいるわけではなく、語呂が良い、1度聞いたら忘れない、口に出して言いたくなる、というような理由で段々と広がっていったようです。
「やばい!」をポジティブな使い方もネガティブな使い方もするように、「マジ卍!」もポジティブな使い方もネガティブな使い方もできる、ある意味万能な言葉だったのでしょうね。
今ではもう古い言葉になってしまっているのが寂しい気もします。
卍の正しい書き順
〝卍〟は一目見ただけだと、どこから書き始めるのかも書き順もよくわからない字です。
しかし、漢字として辞書などに登録されているのですから、ちゃんとした書き順が決まっています。
自分の書き方と比べて確認してみましょう!
- 一番上の横線 —
- 真ん中の横線 —
- 真ん中の縦線 |
- 右側の縦線 |
- 左側の縦線 |
- 一番下の横線 —
ということで、〝卍〟という字は全部で六画の漢字になります。
東京リベンジャーズは「卍」です。
現在では大人気のアニメ〝東京リベンジャーズ〟
こちらのアニメでは〝東京卍會〟というものが出てきます。これは主人公と関わりが深く、アニメの中でも頻繁に登場する組織です。
そのため、〝卍〟のマークも至るところで描かれています。
前述した通り、ナチス・ドイツを連想させるものを禁止している国もあり、その配慮なのか海外で放送されている〝東京リベンジャーズ〟は〝卍〟という字が消されているものもあるようです。
しかし、実際〝東京リベンジャーズ〟に登場するのは〝卍〟であり、〝卐〟とは全く関係がありません!
まとめ
日本人にとってはお寺のマークとして広く知れ渡っている〝卍〟。そしてそれによく似ている〝卐〟。
この2つはよく似ていますが、全然違った意味合いを持っていました。
わたしたちには馴染みのないものですが、当時の悲惨な状況を思うと、それを思い出すきっかけとなってしまうかもしれない〝卍〟という字を避けたい気持ちは十分に想像が出来ます。
それを踏まえて、〝卍〟という字を海外の人の前で使用することは、気をつけた方が良いかもしれませんね。どうして控えた方が良いか理由を知ると、気を使うことも億劫ではなくなりますよね。
そして、なぜ使用してはいけないのかという歴史を知ったからには、〝卍〟と〝卐〟が違うものだという認識、間違えてはいけないという意識が必要です。