みなさんは、自分の畑の土のこと、どのくらい理解していますか?中級者の方でも、あまり理解していない人が多いのではないでしょうか。
土のことといっても、固さ、砂・粘土、酸度、栄養状態など、知っておいたほうが良い項目はたくさんあります。
そこで、今回は、土のことを知るための土壌診断方法6選を紹介します。自分の土のことを知って、無肥料栽培を目指しましょう。
土壌診断0:雑草から土の総合力を調べる
土壌診断をしようとするとそれなりにお金がかかるので、まずは簡単にできる方法を紹介します。
簡単な方法とは生えている雑草を観察することです。 正確なデータではありませんが、雑草を観察することで、その土がどのくらい植物の栽培に適しているかがわかります。
そのため、まずは自分の畑に生えている雑草をよく観察してみましょう。
今回は、生えている雑草で畑のステージを4つに分けてみました。
ステージ0:雑穀が育てられる
ステージ0では以下のような雑草が生えてきます。これらの雑草は、どんな環境でも生えるのが特徴です。
これらの雑草は多年草なので、一度はびこると何年も生えてきます。 そのため、雑草の近くには野菜が根を張れずに、うまく育てることができません。
ステージ0の対処法
このステージではおいしい野菜を育てることが難しいので、ヒエ、アワ、キビ、えごま、そばなどの雑穀を育てましょう。 また、ジャガイモやネギを育て、収穫期に畑を掘り起こし雑草の根を取り除いていくのも良い方法です。
ただし普通に耕すと、根が切れてさらに増えてしまうので、シャベルなどで大きな根を取り除いていく必要があります。
ステージ1の畑ではおいしい野菜を育てることができないので、土づくりすることが先決です。 腐葉土や堆肥などの土壌改良剤を使ってフカフカの土を目指しましょう。
緑肥作物を育てるのも有効です。 土づくりについては以下の記事を参考にしてみてください。
ヨモギ
草餅などに入れることがあるヨモギですが、以外にもステージ0でも生える雑草です。お灸やもぐさとしても使われます。
ヨモギは植物活性剤の一種である天恵緑汁の材料としても使えます。 畑にヨモギが生えていたらラッキーですので、収穫して天恵緑汁の材料にしてしまいましょう。
天恵緑汁を使うと植物が病気にならず、ぐんぐん育ちますよ。
ヨモギはすぐに生えてくるので全部収穫しても問題ありません。
少ない材料で天恵緑汁を作ることができるので、ぜひ試してみてください。 詳しくは以下の記事をご参照ください。
クズ
秋の七草のひとつであるクズですが、つる性でどこにでも生えます。
繁殖力が強く駆除が困難な雑草ですが、その生命力から漢方の葛根湯やクズ湯としても利用されています。
また、クズ粉やクズ餅、クズ切りなど身近な食べ物としても利用されているので、収穫して領してみてもよいでしょう。
ステージ1:酸性で痩せていても育つ野菜が育てられる
ステージ1では以下のような雑草が生えてきます。これらの雑草は、酸性で痩せている土地によく生えます。
このような土地では、酸性で痩せた土地でも育つ野菜が適しています。 例えば、サツマイモ、枝豆、大豆、ジャガイモ、ライムギなどです。
ステージ1の野菜を育てるには、ステージ0と同様に土づくりが重要です。完熟堆肥や草木灰、もみ殻くん炭などを施してフカフカの土を目指しましょう。
また、酸性に強くない野菜を育てるには、石灰類を施しpHを調整する必要もあります。石灰資材については以下をご覧ください。
クローバー
クローバーのようなマメ科の植物は、野菜の栄養となる窒素を空気中から吸収し土の中にとどめてくれる役割をします。
そのため育てる野菜がないうちは、クローバーなどのマメ科の雑草を育てて大きくなってから畑にすき込んでもよいでしょう。
食べられる雑草
ハハコグサは春の七草のひとつです。咳止め薬としても使われます。アザミやスイバも食用になります。
ステージ2:少し養分があるため野性味の強い野菜が育てられる
ステージ2では以下のような雑草が生えてきます。ほとんどの畑がこのステージ2です。
この土壌では、ミニトマトやサニーレタスなど、こぼれ種でも自然に発芽する野性味の強い野菜なら難なく育ちます。
さらにステップアップしたいなら、完熟たい肥などを施す必要があります。
スベリヒユの食べ方
ステージ2の畑に生えるスベリヒユは食べられる雑草としても有名です。独特なぬめりと酸味があり、栄養価も高いと言われています。
スベリヒユは根を除く全草が、生や乾燥品として食べられます。地域によっては雑草ではなく食用として畑作もされているほどです。
からし醤油和えが一般的ですが、おひたし、和え物、油炒め、酢の物、煮びたし、みそ汁の具など様々な食べ方ができます。
食べられる雑草
スベリヒユの他に、シロザ、アカザ、ツユクサ、アオビユ、カラスノエンドウは食べられる雑草です。新芽や若芽、マメなど柔らかい部分が食べられます。
ステージ3:無肥料でどんな野菜も育つ
ステージ3では以下のような雑草が生えてきます。これらの雑草の葉の色が濃く、勢いが強くなってきたら無肥料で野菜が作れるようになります。
このレベルになると、雑草も食べられるものが多くなっています。
最終的にはこのステージを目指しましょう。
このステージになれば、玉レタス、キャベツ、白菜、大玉トマトなどいろいろな野菜が育てられます。
食べられる雑草
ナズナや春の七草でぺんぺん草とも呼ばれています。ハコベも春の七草です。
ホトケノザという春の七草もありますが、春の七草のホトケノザはコオニタビラコという草です。ここで紹介したホトケノザとは別物です。
ただし、雑草のホトケノザにも毒はなく食べられるそうです。 ヒメオドリコソウも食べることができます。てんぷらやおひたし、胡麻和えなどで調理するとよいでしょう。
我が家の市民農園の雑草たち
我が家の市民農園では、端にヨモギが結構生えていますが、これを使って天恵緑汁を作っています。
それ以外はステージ2や3の雑草が多い印象です。
雑草は草マルチで有効活用するのがおすすめです。草マルチと雑草対策については以下の記事をご覧ください。
土壌診断1:土の固さを調べる
根が深く広く張るためには、土が深くまで柔らかく、通気性が良くなければいけません。そのため、土の固さは重要です。
一般的には、表面から20cmを作土層といって、楽々根が伸ばせる状態でなければいけません。また表面から60cmを有効土層といって、根が張る限界の場所と言われています。
今回は、土の固さを調べる方法を2つと、土が固い時の改善策を紹介します。
支柱を土に挿して固さを調べる
土の硬さを調べる方法として、簡単なのが直径6~9cmの支柱を土に挿してみることです。
支柱が20cmまでは簡単に入り、頑張れば60cmくらいまで入るのであれば、作物の生長に十分な柔らかさがあります。
土を掘って固さを調べる
深さ60cmほどまで土を掘ってみて、その土に根が伸びているかを確認します。
根が伸びていれば合格ですが、根がみられなかった場合は、根が張れないほど土が固い証拠です。
30cmくらい土を掘った時に、水がにじみ出てくるような土は、地下水が高い証拠です。そのような場合は、畝を高くして排水をよくする必要があります。
土の固さを柔らかくする方法
土の表面が固い場合には、深く耕すことが重要です。全面を耕すのが難しい場合は、1m間隔でも良いので、深く耕しましょう。
耕す際に樹皮を発酵させたバーク堆肥などを混ぜると空気が入り、柔らかい土ができます。
土壌診断2:土質を調べる
土はおもに砂と粘土からできていて、そのバランスが土質です。
土を採取して調べる
採取した土に少量の水を加えて、こねた後、棒状にします。
棒状にならずに崩れてしまうのは砂質、粘りが強く細長くまとまるのは粘土質の土です。その中間の鉛筆の太さくらいにまとまるのが理想の土とされています。
砂質はざらざら、粘土質はヌルヌルといった質感です。
砂質の土だった場合
砂質の土は、保水力や養分に乏しく、乾燥しやすいですが、灌水をすれば各種野菜を栽培できます。養分を蓄えることができないので、肥料切れを起こしやすくなります。
肥料切れを起こすからといって、一度にたくさんの肥料を施すと肥料焼けを起こすので、少しずつ施さなければいけません。
欠点を改善するためには、堆肥を混ぜたり、緑肥作物を作付けして鋤き込んだりして、保水力と養分保持力を高める必要があります。
また、マルチや灌水によって水分を保持し、肥料を数回に分けて追肥するなどの工夫が必要になります。
粘土質の土だった場合
粘土質の土は、保水性があり水分不足にはなりにくいですが、排水性・通気性が悪く、根が酸素不足になりがちです。
養分を蓄えることができるので、肥料持ちも良いです。肥料焼けもしにくいですが、長年の肥料が蓄積してしまうことがあります。
水はけが悪くなりがちなので、砂や堆肥をまぜたり、高畝や排水溝を作ったりして、排水性と通気性を向上させる必要があります。
土壌診断3:土に含まれているものを調べる
土の中にどのようなものが含まれているかも重要です。
有機質がどのくらい含まれているか
有機質がある程度多くないと植物が育ちません。
有機質が少ないと、痩せていて固くなりやすく、肥料持ちが悪くなります。見た目では黒味がなく、パサパサしていて、見た目より重いのが特徴です。
逆に有機質が多いと、肥えていて排水性や通気性が良く、多くの作物が好む環境になります。黒っぽく、フカフカしていて、軽いのが特徴です。
有機質が多い土は、水と混ぜてかき混ぜると、濁ったままでなかなか沈殿しません。逆に有機質が少ないと、すぐに沈殿して水が澄んできます。
有機質が少ない時は、堆肥を多めに鋤き込みましょう。
石が多くないか
石が多い土は、土の体積が少なくなるので、肥料持ちが悪く、肥料不足や肥料焼けになりやすくなります。また、耕しにくいです。
耕している最中に石を見つけたら、そっと畑の隅に移動させましょう。決して路上に投げたりしないようにしてください。
土壌診断4:土の酸度を調べる
植物によって、好みの土壌酸度(pH)が違うので、酸度を把握しておくことも重要です。
中性がpH7.0で、それよりも数値が低ければ酸性、高ければアルカリ性になります。 雨が多い日本は、基本的に酸性になることが多いです。
野菜の多くは弱酸性から中性を好むので、酸性が強い場合には 石灰資材で中和する必要があります。
逆に、土がアルカリ性の場合は、大量の水で洗い流すか、 トウモロコシなどのイネ科の植物を栽培して、塩類を吸収・除去します。
酸度の調べ方
1.畑の4隅から土を採取します。地表から10~20cmくらいの、根が張る深さの土を採取すると良いでしょう。
2.土1:水2くらいの容積比になるように混ぜ合わせます。
3.水が沈殿するのを待って、上澄み液を採取し、試薬と反応させてカラーチャートと比較します。
酸度を計測するメーターも販売されています。 調べる箇所が多い人や、長期にわたって家庭菜園を続ける人は購入したほうが良いでしょう。
生えている雑草で酸度を知る
日本のように雨の多い国では、土中のミネラル分が流出しやすいので、ほとんど酸性です。しかし、地中海沿岸のように雨が少ない地域の土は、中性からアルカリ性です。
そのため、地中海沿岸の地域が原産の野菜や植物は中性に近い方が育ちやすくなります。逆に、日本や東南アジアが原産の植物は酸性に強い傾向にあります。
その性質を利用して、生えている雑草から酸度を知ることもできるのです。酸度を知れる雑草の例は以下の通りです。
土壌診断5:土の栄養状態を調べる
栄養状態を知る方法として、野菜から教えてもらう方法と、検査キッドを使う方法があります。
野菜の状態から推測する
肥料の三大栄養素である、窒素・リン酸・カリウムのバランスが良好かどうかは、野菜の状態から知ることができます。
葉の色が淡くて生長が思わしくない場合は、窒素不足です。逆に、葉ばかりが茂って、実がつかないときは、窒素過多の可能性があります。
肥料焼けを起こしたり、肥料をたっぷり与えているのに、生長が思わしくない場合も、肥料過多を疑いましょう。
葉の縁が白茶けたり、褐色になっている場合は、カリ不足です。
検査キッドを使って調べる
具体的に養分の状態を知りたいときは、市販の土壌診断キットを使います。土壌診断キットを使うと、土のpHと三要素の含有量がわかります。
診断に適しているのは、作付け前と栽培中です。生育が思わしくないときは、栄養のバランスを疑ってみましょう。
栄養が不足している場合
三要素が不足している場合は、窒素・リン酸・カリがそれぞれ単独で含まれている肥料を使います。
栄養素については以下の記事をご覧ください。
まとめ
今回は、土壌診断の方法を6つ紹介しました。
すべて重要な診断ですが、固さと土質、含まれているものは、それほど変化しないので、毎年する必要はありません。 初めて栽培する土地や、数年に1回検査すると良いでしょう。また、 酸度と栄養状態は植え付けごと(半年か1年ごと)に調べます。
土壌診断が終わったら、土壌改良でどんどん良い土を作っていきましょう。
慣れてくれば、総合力にもチャレンジしてみてください。 ステージ3になれば、ほとんど肥料を使わなくても、良い状態が作れますよ。